昨年度の大きな発表を振り返って

昨年は公立高校入試の変更、そして高校新課程における大学入学共通テストでの情報の導入など、今後の受験に大きな影響を及ぼす2つの大きな発表がありました。

公立高校入試の変更

現在の中2生より変更される高校入試では、近年に多く見られた記述形式に代わって、全問マークシート形式が導入されることが発表されています。試行問題がまだ出されていないため、まだどのような出題となるかが、分からない部分があります。ここからは憶測となってしまいますが、現状の入試問題より出題数が増加することが考えられます。問題数が増加するということは、今まで以上により早く問題に対応する力が必要とされてくる可能性が高くなります。大学入試における従来までのセンター試験、そして共通テストとも英語・国語・数学は、試験時間に余裕がありません。今までの公立高校入試で時間不足となりがちなのは数学くらいで、他教科で試験時間に不足を感じることは少ない問題形式でした。しかし、マークシート形式に変更することによって、共通テストと同様に、迅速な問題対応力を求める問題が増えてくることが考えられます。じっくりよく考えることと、素早く解決する力の両面が求められることになり、結果的に難易度が高くなる可能性も考えられます。今後発表される試行問題に注視して下さい。

大学入学共通テストでの「情報」教科の導入

現中3生は4月からの高校での学習指導要領が変更されます。大学入学共通テストで新教科「情報」が実施されることになり、昨年12月22日に実施された国立大学協会の理事会で、受験生に新教科「情報」の受験を課す方針を了承したとの報道がありました。これは、今月に実施される国立大学協会の総会で、正式に決定されてきます。入稿時の1月7日時点では正式な決定は発表されていませんが、新教科「情報」については入試教科として必要なものとなることは、ほぼ決定的と言って良いでしょう。こちらについては大学入試センターが既に試行問題が発表されていますので、大学入試センターのホームページでご覧ください。

なお、出題内容は以下の通りです。  

第1問 小問集合

問1 ネットワークの仕組みやクラウドサービスの技術としての特徴と利点、デジタルデバイドの生じる要因を問う問題。

問2 示したいデータに対して、図解による可視化を行う上で適切な方法を問う設問。選択肢の図は、PowerPointのSmartArtを使用。

問3 画像をデジタル化する手順と、デジタル化の利点を問う設問。

問4 IPv4アドレスにおけるサブネットマスクと、イントラネットの扱いと、2進数表現に関する設問。

第2問 プログラミング

比例代表制の議席配分を題材にしたプログラミングの問題。学習するプログラミング言語が学校によっ

て異なる可能性があることを考慮して、プログラムは擬似コードで記述されている。

問1 配列を用いる反復処理の基本を問う設問。連想配列やforeachを使わない古典的な処理だが、モダンな言語に慣れていても回答できる。

問2 提示したアルゴリズムに従って実行する処理をシミュレーションして途中経過や結果を問う設問。

問3 問2で確認した実行フローを行うプログラムを記述し、アルゴリズムを実装したプログラムの内容を補完する設問。

第3問 統計、量的データの読み取り

散布図やヒストグラム、表などに散らばった各種のデータを読み取る設問。

問1 2つのデータの相関を分析し、相関係数の絶対値や正負が示す意味を答える設問。

「数学I」の相関に関する知識を要する。図1がやや見づらく、設問文から図を理解する必要がある。

問2 回帰直線の性質に関する知識を用いてデータ分析を行う設問。

問3 データから求めた各種の統計量(平均、分散、四分位数)で分析を行う設問である。「数学I」の四分位数や分散に関する知識が必要になっている。

問4 データ中の2つの属性を軸としたクロス集計の結果を分析する設問。

「情報I」の試行問題を見ると、ここではやはり数学の知識が必要なとなってきます。新課程での大学入学共通テストでは数学②では従来の数Ⅱ・数Bに加えて、数Cの単元も出題されてきます。国公立大学への進学を考えた場合、新教科「情報I」と「数学②」の単元増加を考えると、従来以上に数学の比重は高まってきます。特に文系受験者の数学の比重は一段と高くなってきます。現中3生はその点を意識して高校進学後の学習に取り組んで下さい。

(本校 鈴木)