大学入試における「入学者選抜実施要項の見直しに係る予告」と「共通テスト実施大綱の予告」について
今回の「見直し予告」はどのようなものでしょうか?
今回の入試改革は2021年入試と2025年入試の2段階で、当初の構想は、第1弾の2021年は現行課程のままセンター試験を共通テストに変えて、外部検定(英語)、記述式、調査書を部分的に導入・改訂し、第2弾の2025 年で新課程移行にあわせて全面変更というものでした。そして、変更の規模は第2弾の方が大きい予定でしたが、計画は修正され今回確定とした第2弾の内容は、入試制度としては緩やかな変更に留まった状況です。今回の「見直し予告」のポイントは「外部検定と記述式=大学判断」「調査書=簡素化」となります。以下でその具体的な項目を確認していきましょう。
① 外部検定
- 共通テストでの導入は見送り。
- 大学は学部の特性や必要に応じて活用することが望ましい。
- 大学は家庭環境や居住地域により外部検定の受験が困難な受験生に配慮。
- 大学は外部検定の活用について、その年の入試の基本事項を公表する7月末までに公表(ほかの資格・検定試験も同様)。
- 大学は大規模災害等で外部検定が実施されない場合の代替措置についても検討しておくことが望ましい(ほかの資格・検定試験も同様)。
② 記述式
- 共通テストでの導入は見送り。
- 大学は可能な範囲で取り入れることが望ましい。
- 記述式の目的として、次の2つの能力の評価を提示。
「自らの考えを論理的・創造的に形成する思考・判断の能力」
「思考・判断した過程や結論を的確に、さらには効果的に表現する能力」
※ 空所補充で知識を問うような問題にならないような工夫が求められています。
③ 公平性・公正性、入学者の多様性の確保
- 入試における公平性・公正性の確保を改めて強調。
- 大学は年齢、性別、障害の有無、国籍、家庭環境、居住地域など多様な背景を持った学生の受け入れに配慮。
※ 進学に困難を持つ受験生などを対象とした入試では、努力のプロセス、意欲、目的等を重視した評価を行うことが望ましい。その際、選抜の趣旨や方法について、社会に対して合理的な説明を行うこと、大学教育に必要な知識、思考力等も適切に評価することに留意。 多様性の確保として「理工系分野における女子」を例示。 - 大学は障害のある受験生に対する合理的配慮を充実。
※ 内容を決定する際は、受験生一人ひとりのニーズを踏まえた建設的対話を行うようです。
④ 調査書
- 調査書は簡素化して、原則、指導要録にあわせる。以下の点が改訂されます。
「総合的な探究の時間の記録」欄
【現】「活動内容」と「評価」を学年ごとに文章で具体的に記入。
【新】「学習活動」と高校で定めた評価の「観点」を記入。生徒に顕著な事項がある場合は「評価」を端的に記入。
「特別活動の記録」欄
【現】委員会名や係名などの活動の内容と、その所見を文章で記入。
【新】活動(学校行事、HR など)ごとに高校で定めた「観点」を記入。十分に満足できる場合に○印を記入。
「指導上参考となる諸事項」欄
【現】学年ごとに6つの項目(「学習における特徴等」など)について記入。
【新】学年ごとに1つの欄とし、要点を箇条書き。生徒の特徴・特技、学校外の活動などは、指導要録の内容を精選して記入。
現在、大学は「指導上参考となる諸事項」以外の記載を求めることができましたが、廃止されることになります。また、学部等が求める能力に関して、特に推薦できる生徒については、大学が「備考」欄に記載を求めることができましたが、これも廃止されます。更に特定の分野(保健体育、芸術、家庭、情報等)で特に優れた成果を収めた生徒についても、大学は「備考」欄に記載を求めることができましたが、これも廃止となり、受験生本⼈から資料を提出する形式に変更されます。
- 学習成績概評の「マル A」を廃止。
- 枚数制限の撤廃を撤廃。両面1枚に戻す。
- 観点別学習状況の記載は見送り。
今回の「見直し予告」における今後の注意点
今回の「見直し予告」では外部検定や記述式の導入は大学判断とされましたが、取りまとめでは、導入した大学にインセンティブを付与することが提言されています。これは、運営費交付金や私学助成に反映される可能性があります。そのため、特に私立大学にとっては、この点は今後の検討材料になってくる可能性が高いと考えられます。そして、今回の入試制度の変更は当初の案と比べて、トーンダウンしていますが、以前にも触れていますが、入試科目が変わることを忘れてはなりません。これから各大学は「2年前予告」に向けて、今後の入試をどうするのか検討していくことになります。現在の中学校3年生の皆さんは、まず高校入試があるのですが、大学への進学を考えている人は、今後、新たな入試について、受験科目が第一になりますが、各大学がどのように対処していくかを確認しておきましょう。(本校 鈴木)