急増する中学生の英語嫌い (朝日新聞 令和2年4月7日朝刊より)
単語数2倍・即興で話す・長文化…
難しくなる中学英語
来春から中学校で使われる教科書の検定が終わり、中身が公表された。小学校で英語を学んできた生徒が使う新しい英語の教科書は、多くで難しくなり、「聞く」「話す」を軸に構成も一変した。
「This is my friend Paul.」
「Oh, I know him.」
開隆堂の1年の教科書。代名詞を学ぶ単元は、漫画形式で示されたこんなやり取りを聞く学習から始まる。その後も「対話を聞いて、それぞれの人物に合うものを線で結びましょう」「あなたが好きなキャラクターを描いて、友達と表現しましょう」など、聞いたり話したりする練習が続く。文法を確認するのは単元の最後だ。担当者は「あくまで英語を『使うための支え』という位置づけにした」と話す。
小学校の教科化で
教育出版は「Key Sentence(基本文)」として単元途中で文法に軽く触れ、最後に詳しく説明する作り。東京書籍も、単元の最初を「聞く」に設定した。担当者は「先生には衝撃な教科書かも知れないが、小学校は聞いたり話したりするところから始める。その蓄積を無意味にしたくない」と話す。
多くの教科書は「即興」での言語活動を数多く求める。
( 中 略 )
作ってはみたが…
新学習指導要領では「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能のうち、「話す」を〈やり取り〉と〈発表〉に分け、5領域別の目標を設定した。ある教科書会社の担当者は「『理解する』だけでなく、実際に『使う』ことを求める即興は、単純に難しい。現行本とのギャップが激しい教科書になった」と話す。
中学卒業時までに学ぶ単語も大幅に増えた。現在は中学校で1200語程度だが、新指導要領では、1600~11800語に。小学校で既に600~700語を習っており、中学卒業時には、少なくとも2200語、現在の2倍近くになる。
( 後 略 )
大津由紀雄・慶大名誉教授(英語学)の話
語彙も文構造も盛りだくさんで、現行の教科書より難易度がかなり高くなっている。教科書間でレベルの差があるが、説明が少ないものが目立つ。これで果たしてどれだけの生徒がついてこられるのか疑問だ。生徒たちは、小学校の英語の教科化で英語嫌いになったうえに、中学校でも立ち直れず、二度つまずきかねない。不安になって塾に行く子が増え、経済的に行けない子との間で格差が開きそうだ。
(新型コロナウイルスのための休校期間を利用して)
敬倫塾では、2週間、完全に塾での指導をとりやめた。この機会に私は、大いに英語についての知識を蓄えることができた。
1つは、高校生を指導するための英語の知識で、もう1つは、中学1年生の教科書と、中学1年生の学校で行われた定期テストの内容の吟味だ。
(中学1年生の教科書と定期テストの内容)
先ず圧倒されるのは、教科書に出てくる単語の多さである。次は、会話がいろんな場面で登場する。文法は後回しにして、とにかく、こういう時は、このような表現をするということを覚えさせようとする。そして、実際の英語のテストでは、単語のスペルを要求してくる。
小学校では「書く」という指導をほとんどせずに、中学1年生の1学期中間テストでは、イラストを見たり、放送文を聞かせてそれにあてはまるものを英語で書くことを要求します。そのため、以前と比べて、ぐっと難しい内容のテストとなっています。私見ですが、文を書くときの「きまり」をしっかり身につけてから、いろんな単語を覚えながら、使い方を拡張した方が良いのではと思っています。