塾長提言 9月号

[朝日新聞 2025年8月1日朝刊]

 子どもの学力の変化をみる、国の「経年変化分析調査」(2024年度)の結果が7月31日公表された。前回(2021年度)より全教科で成績が下がった。文部科学省は「継続的な分析が必要」と慎重だが、下げ幅が大きく、識者や省内に「深刻な結果」との認識も広がる。

経年変化分析調査の平均スコア(500を基準とする)

2016年度2021年度2024年度最近2回の増減
中3数学502.0511.0503.0-8.0
中3国語508.6511.7499.0-12.7
小6国語505.8505.8489.9-15.9
小6算数502.0507.2486.3-20.9
中3英語500.0478.2-22.9

 スコアが前回より大きく下がったのはなぜか。お茶の水女子大名誉教授である耳塚寛明は、主に4つの要因を挙げる。「①勉強時間の減少」「②学習指導要領にある『知識・技能』の定着不足」「③家庭の経済的な背景」「④SNSやゲームなどのデジタル環境の影響」だ。特に④が一番大きいかもしれないとみる。

 新型コロナウイルスが流行し始めたのは、2019年の12月頃です。この頃から、学習塾に通う生徒の数が徐々に減少し、塾に行かなくても家庭で学習できるICT教材が多く普及するようになりました。現在では、学校でもICT教材活用した授業が増えています。こうしたデジタル環境の変化に伴い、「活字にふれる時間」が減少し、「スマートフォンを使った動画視聴やゲームに費やす時間」が増加しています。この傾向が、基本的な読み書き能力や読解力の低下につながっていると考えられても不思議ではありません。

 先ほど、学習塾に通う生徒が減少していると述べましたが、その一方で、私立中学への進学を目指して塾に通う小学生の数は増加傾向にあります。つまり、学力が一部では向上していると考えられます。それにもかかわらず、全体として学力低下が著しいのは、受験を意識しない層の学力が、以前にも増して低下していることが大きく影響しているのではないでしょうか。

 また、近年では、就職しても短期間に退職してしまう人が増えています。これは、自分のやりたいことが明確でないまま「なんとなく」生きていることが原因ではないでしょうか。

 自分のやりたいことをしっかり考え、それを見つけ実現することが大切です。すでにやりたいことが見つかっている人は、その実現に向けた目標を定め、実行に移していきましょう。まだ見つかっていない人は、学問を通じて自分を鍛え、自分の可能性を広げるために勉強を続けることが重要です。